フィールドウォッチは、飾り気のないシンプルな腕時計として知られています。けれども、その歴史はとても重要です。第一次世界大戦で生まれたフィールドウォッチがなければ、今の腕時計の姿はずいぶん違っていたかもしれません。
当時はまだ「フィールドウォッチ」という呼び名はありませんでしたが、戦場で使われた最初の腕時計こそがフィールドウォッチでした。丈夫で、文字盤が読みやすく、懐中時計よりも手軽に使える。その実用性から、兵士にも将校にも欠かせない道具になりました。
もともとは軍用の時計だったフィールドウォッチが、なぜ今ではおしゃれな腕時計として街で愛されているのでしょうか。この100年あまりの歩みと、人々のイメージの変化をたどってみましょう。
はじまりは戦場から
第一次世界大戦でヨーロッパ各地に戦火が広がり、塹壕戦が中心になると、兵士たちは時刻を正確に知り、仲間と時計を合わせることが生死を分けると気づきます。しかし当時の懐中時計は決して安くなく、塹壕の過酷な環境に耐えられるほど丈夫でもありませんでした。
そこで前線の兵士たちは、便利さと生き延びるために、腕時計を自ら買い求めるようになります。当時の腕時計は、懐中時計にベルトを付けたような姿でした。戦争が終わると、兵士たちは日常生活でもその腕時計を使い続け、懐中時計から腕時計へと移る人がどんどん増えていきました。
軍の装備品としての腕時計
初期のフィールドウォッチは、今の感覚で見ると少し不格好です。それでも戦場での便利さは誰の目にも明らかでした。やがて各国の時計メーカーや、時には置き時計のメーカーまでもが政府から注文を受け、兵士の装備品として腕時計を作るようになります。
この流れから生まれたのが、パイロットウォッチです。最初は兵士に支給されるフィールドウォッチとほとんど同じものでしたが、やがて独自のスタイルと仕様を持つようになりました。パイロットウォッチの歴史は「第二次世界大戦のパイロットウォッチの歴史」で詳しくご紹介しています。

戦後、ファッションとして広がる
第二次世界大戦が終わるころには、腕時計はほとんどの人の日常に欠かせないものになっていました。19世紀の終わりには女性のアクセサリーとして知られていた腕時計が、フィールドウォッチによって新しいイメージを手に入れたのです。
ところが1940年代の終わりになると、フィールドウォッチは人気が出すぎたがゆえに、戦争を思い出させるものになってしまいました。都会の暮らしには似合わないと感じる人も多かったようです。
しかし皮肉なことに、戦争やアウトドアを連想させるイメージこそが、のちに一般の人々の間で人気が広がるきっかけになります。ベトナム戦争のころ、反戦の気運が高まるなかで、抗議する若者やアーティストがあえて軍用の服を身に着けるようになりました。それがポップカルチャーの象徴となり、多くの人がそのスタイルをまねするようになります。フィールドウォッチもそのひとつとして取り入れられ、戦場の道具はファッションの一部へと変わっていきました。

現代こそ、シンプルな腕時計を
今では、メッセージを受け取ったり、電話をかけたりできるスマートウォッチがあります。それでも、シンプルな腕時計を求める人は少なくありません。スマートウォッチが進化するほど、「時刻がわかればそれでいい」という時計を求める人も増えているようです。
そんな人にぴったりなのがフィールドウォッチです。最近は日付表示を備えたモデルも多くありますが、読みやすいインデックス、コントラストのはっきりした文字盤、気軽に着けられる使いやすさという基本は、今も変わっていません。
もう軍の標準装備ではなく、かつてほど欠かせない道具でもありません。それでもフィールドウォッチは、その出自を越えて、必要かどうかに関係なく誰もが欲しくなる腕時計になりました。そういう意味で、フィールドウォッチはまさに時代を超えた1本といえるでしょう。
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